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第十二話「光」


「つっ!!」
私は凶器を持ったヌイグルミの大群を相手にたった二つの武器で戦いを挑んでいる。
片方を投げ武器にし、もう片方を盾として展開する。
無敵のコンビネーションで私は立ち回っているはずだったのだが。
「ケケケ。 ドウシタ、モウオ終イカ?」
奥で傍観している人形が口を開いて愉快に笑っている。
戦闘を始めて3分あまり、私は何度も完璧なタイミングでチャクラムを放ち、ヌイグルミを撃破するはずだった。
しかし、予想とは違いあっさりとヌイグルミにそれはかわされてしまう。
逆にその隙をつかれ盾を攻撃される。
どうやら、チャクラムによる盾は連続使用すれば磨耗するようなのだ。
いつのまにかチャクラムの盾にはヒビが入り壊れそうな状態にある。
これ以上盾を消費するわけにもいかない。
「防衛に徹すれば、負けちゃうわね。」
私はヌイグルミの大群を紙一重でかわしながら距離をとる。
「フウッ・・・」
ザザッ、と足でブレーキを取りヌイグルミの大群を見つめる。
流石の私も息が上がってきている。
不意に頬に何かが流れているのに気がついて、手で拭ってみる。
「ちぇ、かすってたのね。」
手を見れば、ベッタリと血が付着している。
あの大群を潜り抜けた際に、やはりかわしきれずに傷ついていた。
その様がどうも不思議だったのか人形が喋り出した。
「・・・オマエ、魔力供給ニヨル身体ノ能力アップヲシテイナイナ。 ソレデソノ動キ、ナルホド御主人ガ警戒スルハズダ。」
ん、相手が何を言っているのか理解できない。
仮契約とは武器が出せるだけではないのか?
と、そんな事よりもアレを実行してみよう。
私は片腕のチャクラムを外し投げる準備をする。
それを見ていた人形が再び口を開く。
「ムダダ、イクラ身体能力ガ高イカラトイッテ、ヨマレテイテハ、ハナシニナラン。」
人形は私の攻撃は無駄だと言う。
しかし、私はそんな声に耳を傾けもせずに。
「行け!!」
その言葉とともにチャクラムはヌイグルミの大群へと弾丸の如く飛んでいく。
しかし、それは人形の予想通りあっさりとかわされる。
が、ここからが私の狙いだ。
もう片方のチャクラムを外し投げる。
「行け!!」
隙を狙っていたヌイグルミがパターンと言わんばかりに飛びかかってくる。
少し前ならば、これはチャクラムの盾で防いでいたのだが今はない。
「くっ!!」
気合で体を曲げ、かわす。
それと同じにボフッと何かが地面に落ちる音がする。
「ナニ!?」
人形の声もあがりそちらを向いてみると、ヌイグルミが地面へ千切れて落ちていた。
チャクラムが戻ってきて受け止めると、私はこう言う。
「知ってるかな、攻撃は最大の防御なりって。」
「ケケケ!! オモシレエ!!」



あれから、何分経ったのだろう。
数分の気がするし、もう数十分たったような気がする。
もう私は時間を気にしている、余裕などないと言うことだ。
「チャ、チャクラム!!」
私は倒れそうな体を気合で持ちこたえさせ、もう幾度目か分からないチャクラムの攻撃をしていた。
投げる度にボフッと音がしてヌイグルミは地面に落ちていく。
もはや、私の体に傷の無い所などなかった。
あれから、防御を外し徹底的に攻撃に力を継ぎこみ、敵の攻撃は紙一重でかわすといった無茶なことを繰り返していた結果である。
「クッ。」
私はその場で膝をつき、チャクラムを受け取る。
当りを見まわして、私は人形に呟く。
「さあ、最後はアンタだけよ。」
満身創痍ながらも笑みを浮かべながら、ヌイグルミが四散する上に浮いている人形に言う。
人形もその気になったのか、持ってた刃物を構え口を開く。
「ケケケ、口ダケハ達者ナヨウダ。」
人形はそう言うと、一気に私との距離を縮める。
思っていたよりも速い!!
私は横に転がるように人形の突撃をかわす。
「ハァハァ・・・伊達に喋るだけじゃないらしいわね。」
煙が立ちこもる中に向かって私は話しかける。
「マアナ。」
その声がした途端、煙の中から人形が私に向かって現われる。
そんな事は私とて予測済み。
「チャクラム!!」
もう腕も上がらない状態のクセに気合で人形に向かって投げつける。
「ナニ!?」
人形もそれが予想外だったのか、その場で止まりかわせないと悟ったのか防御の姿勢に入る。
防御し終えた後にチャクラムが物凄い衝突音と共に人形が持っている刃物に防がれる。
「え、マジ!?」
ヤバイ、私もアレを決めとして最後の気力を絞って投げたのだ。
あれを返されればもう後が無い。
しかし、私の願いも虚しくチャクラムは無残な落下音と共に地に落ちていた。
目の前にはカタカタと笑っている人形が一つ。
私の状態を見てもうなにも出来ないと思ったのだろう。
「カカカ、コンジョウハリッパダゼ。 シカシ、オシカッタナ。」
刃物を振り上げる、そしてそれは私に振り下ろされる。
そのはずだった、しかし次の瞬間には人形の腕が中に回っていた。
「・・・あんたね、私の武器は二つなのよ。」
息が完全に上がっている状態で唖然としている人形に話しかける。
しばし、の沈黙の後、人形はカタカタと笑い始めた。
「オソレイッタゼ、ダガ・・・」
ゆっくり私に人形は近づいてくる。
どういうことだ、武器は無いは・・・・!!
「カカカ、オレモブキヒトツジャナイゼ!!」
片手に短刀が握られている。
どうしよう、もう体が・・・。
「あ・・・。」
流石に私は覚悟を決めた。
人形が短刀の攻撃範囲にはいる。
「マア。オシイキモスルガナ」
私は目をつぶって短刀が振り下ろされるのを待つ。
「ドサッ」
次の瞬間に刺さっている音が聞こえたはずなのだが、目の前で何かが落ちた音がした。
どうしたのだろうと目を開けて見ると、目の前にあの人形が地面に倒れていて動く気配がない。
回りは電気が戻ったのか明かりが燈っている。
「チッ、ヤリソコネチマッタ。」
倒れている人形から声だけが聞こえる。
「キショ!!」
口も動かないのに声だけ聞こえるのは流石に気味が悪い。
その発言が聞こえたのか。
「ワルカッタナ、ゴ主人ノ魔力キレダ。 モウウゴケネエ。」
へ、ということは。
私がポカーンとしてるのを見たのか。
「オマエノカチダ。 フタリノガキハシラナイガナ。」






別段
「ふう。 あつつっ。」
私はケガの様子を見つつ、ここまでボロボロにしてくれた人形を拾い上げて話しかける。
「ふむ、思ったよりもカワイイかも。 どう? お願いするなら置いてあげるけど。」
だらんと普通の人形に戻った人形にはなしかける。
しばしの間の後
「ヤナコッタ。」
と、心底嫌そうな返答が帰ってきた。
「あんた、今私の手に命があるって分ってる?」



第十二話「光」終わり